なぜM'ayはリバティとモリスを選んだのか
新しいバインダーカバーに使う生地を探していたとき、リバティとモリスという二つのブランドに辿り着きました。 最初は「なんとなく世界観が好き」という感覚だったのですが、調べていくうちに、これは偶然ではなかったと気づきました。
産業革命が変えたもの
19世紀なかば、ヨーロッパは産業革命の只中にありました。工場が次々と建ち並び、機械が大量のものを短時間に生産する時代。生活は便利になった。でも、街に出回るものの多くは、粗く、画一的で、無骨でした。
そこに、二人の人物が登場します。ウィリアム・モリスとアーサー・リバティ。同じ時代のロンドンに生きた、この二人が感じた「これじゃない」という違和感が、今のM'ayにまで繋がっています。
ウィリアム・モリス —— 作り方への問い
作り手であるモリスが産業革命に感じた違和感は、「できあがったもの」だけではありませんでした。ものが作られる方法そのものが変わってしまったことへの、深い疑問でした。
それまで職人は、素材を選び、手を動かし、時間をかけて一つひとつのものを生み出してきた。そこには意思があり、美しさへの敬意がありました。それが機械生産に取って代わられ、ものは「早く・安く・大量に」作られるようになった。
「生活に必要なものこそ、美しくあるべきだ。」
— William Morris, 1880年代モリスはこの信念をもとに、壁紙・テキスタイル・家具・書籍のデザインを手がけました。植物や鳥を繊細に織り込んだ「いちご泥棒」などの柄は、今も色褪せることなく世界中で愛されています。デザイナーであり詩人であり、ファンタジー小説の先駆者でもあったモリスは、「モダンデザインの父」と呼ばれています。
アーサー・リバティ —— できあがったものへの疑問
同じ頃、アーサー・リバティはロンドンで東洋の工芸品を扱う仕事をしていました。日本の着物、陶器、漆器——そこには、産業革命が生み出したものとはまったく異なる美しさがありました。
「なぜ西洋の日用品は、こんなにも無骨なのか。日常に使うものが、こんなに美しくあれるのに」。
1875年、リバティはロンドンのリージェントストリートに店を開きます。東洋の美への憧れと、日常に美しさを届けたいという思いから生まれた店です。今もなお続くリバティの代名詞、Tana Lawn(タナローン)の生地は、その精神を現代に伝え続けています。
William Morris
産業革命が変えた「作り方」への深い疑問。職人の手と知恵が失われていくことへの、静かな問いかけ。
Arthur Liberty
産業革命が生み出した「できあがったもの」への疑問。日本工芸の美しさとの出会いから。
二人はロンドンで繋がっていた
面白いことに、二人は同じ時代のロンドンにいただけでなく、実際に繋がっていました。リバティの店には、モリスのテキスタイルが並んでいたのです。
問いかけから生まれたものと、憧れから生まれたもの。出発点は違っても、「日常を美しくしたい」という同じ場所に着地した二人が、同じ棚に並んでいた。なんだか、それだけで少し嬉しくなります。
リバティとモリス、実は身近にある
リバティもモリスも、19世紀の話だからといって、遠い存在ではありません。
リバティの生地は今もロンドンの本店で作られ続けており、ユニクロとのコラボレーションや、手帳・ノート・ポーチといった文具類にも使われています。お気に入りのスカーフや布小物が実はリバティだった、という方も少なくないはずです。
モリスのデザインも同様です。「いちご泥棒」をはじめとする柄は、トートバッグ・マグカップ・クッション・壁紙として、カフェやホテルのインテリアにも取り入れられています。「どこかで見たことがある」と感じたら、それはモリスかもしれません。
150年前にロンドンで生まれたデザインが、今も日常のあちこちに溶け込んでいる。それはきっと、「暮らしの中に美しさを」という問いが、時代を超えても変わらないからだと思います。
M'ayの「これじゃない」
私がバインダー貯金を始めたとき、最初に感じたのもやっぱり「これじゃない」という感覚でした。
家計管理は大事だとわかっている。でも、無地のノートや味気ない封筒では、なぜか続かない。机に向かうたびに億劫になる。楽しくなければ続かないし、続かなければ意味がない——そう気づいてから、「じゃあ楽しい時間に変えてしまおう」と思いました。それがM'ayの出発点です。
モリスは深い疑問から、リバティは憧れから、私は「楽しくなければ続かない」という実感から。出発点はそれぞれ違います。でも気づけば、全員が同じ答えに辿り着いていました。
日常に使うものが、美しくあっていい。
だから私は、リバティとモリス、この二つを選びました。「世界観が好きだから」というのも本当ですが、それよりもっと深いところで、同じ問いを持っていたから。そう気づいたとき、この生地を使うことが、ただの「素材選び」ではなくなりました。
6月22日より、この生地を使った新しいバインダーカバーをお届けします。手に取ったとき、このブランドストーリーのことを少し思い出してもらえたら嬉しいです。
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