物語の、終わり方について
— 童話シリーズのこと —
童話シリーズを作るときいつも少しだけ迷うことがあります。
どの結末を選ぶか、ということです。
人魚姫は、王子様と結ばれません。原作では、最後に泡になって消えていきます。ピーターパンも眠れる森の美女も、今よく知られている形とは少し違う終わり方をします。子どもの頃に読んだ絵本と大人になってから原作を読み返したときの印象が、まるで違って驚いたことのある方も多いかもしれません。
M'ayの童話シリーズは、そのどちらかといえば原作の側に寄せています。ハッピーエンドを避けたいわけではないんです。ただ、消えていくもの、報われないもの、静かに終わっていくものの中にある美しさを、どうしても手放したくないと思ってしまいます。
なぜそうなのか、自分でも考えたことがあります。
昔から、絵本より活字の本が好きでした。「挿絵がないから読めない」という人もいますが、私は頭の中で情景を組み立てる時間が好きだったんです。だから、好きな小説が映画になると聞くと少し身構えます。物語は受け取りたいけれど、見た目は自分で決めたい。
そう考えると、この童話シリーズは私の頭の中をそのまま送っているのだと思います。「私にはこう見えました」という一枚を、勝手にお渡ししているようなものです。
それでも作り続けているのは
読み終わったあとの
あの余韻が好きだからだと思います。
きれいに終わってしまった物語より、どこか閉じきらないまま本を閉じたときの方が、ずっと長く残っている気がします。
だから、写真は一枚選ぶのにずいぶん時間をかけます。といっても、大変というより、ここが一番好きな時間かもしれません。
たとえば『Snow White』。雪の結晶ひとつにしても、何十枚何百枚と見比べます。形やデザインは物語の温度と合っているか、他の写真と並べてトーンが浮いていないか、大きさや色味、彩度はずれていないか。何度も何度も確認します。
一枚だけなら正解でも、並べると急にそこだけ主張してしまうことがあります。そういう写真は気に入っていても外します。
リフィルに入れている英文も原作から引用したものではありません。物語を読んで、自分の中に残った情景をそのまま英語にしています。訳したものではないので、どこにも載っていない文章です。
色もあまり明るくしません。少し褪せた青や、灰色がかったピンク。物語の最後のページをそっと閉じたあとの、あの余韻のような色を探しています。
表紙の文字色やスクラッチの裏側の色も、お話ごとに変えています。同じ青でも、海の話と雪の話では違う青を選びます。
ここだけの話、実はいちばん迷ったのは『Ocean Whisper』でした。人魚姫といえば、幸せな結末を思い浮かべる方が多いと思います。でも原作はその逆をいきます。
幸せと儚さをどう描くか、ずいぶん考えました。泡と、海に沈んでいく花。足を手に入れたときの幸福と、その裏側にある痛み。相反する二つを同じ作品に置くことが、いちばん難しいことでした。
お気づきでしたでしょうか。このお話に王子様は一枚も出てきません。彼を写せばきっと分かりやすくなったのだと思います。それでも入れなかったのは、彼が一枚でも入ると幸せな結末として閉じてしまう気がしたからです。
とはいえ、こんなふうに話し出すと一作ずつキリがなくなってしまうので、この辺で。どの作品も、ひとつ仕上げるのに二日以上はかかります。人魚姫だけが特別だったわけではありません。この時間を短くする方法はたぶんあるのだと思います。それでもあまり短くしたくないな、と思っています。
みなさんは、どの物語がお好きですか。
そして、その結末をどんなふうに覚えているでしょうか。もし私の作ったものと違っていたら、それはそれで嬉しいことのような気もします。同じ話を読んでも、残る景色は人それぞれのはずですから。
バインダーを開くとき、少しだけ本を開くような気持ちになってもらえたら嬉しいです。貯金は現実的な行為ですが、その手元に物語がひとつあってもいいと思っています。
これからの童話シリーズについて
- これからも定期的に新作を出していきます
- 新作・スケジュールは、その都度ブログとInstagramのストーリーでお知らせします
- 2026年9月30日までは、これまでの作品をすべて常設で販売しています
- 2026年10月1日からは、常設の作品と期間限定の作品に分かれます
常設(通年)
- Alice in Wonderland
- Eternal Rose
- Ocean Whisper
- Never Grow Up
期間限定
- 9〜10月ハロウィン 新作
- 10〜12月クリスマス 新作
- 12〜2月バレンタイン 新作
リバイバル(2027年〜/毎年1ヶ月のみ)
- 1月Snow White
- 4月Petal Wing
- 5月Tower Bloom
- 6月Midnight Carriage
- 7月Arabian Nights
- 8月Little Prince
- 9月Sweets Forest
- 11月Red in the Woods
気になるお話がある方は、2026年9月中にご検討いただけると安心かもしれません。あとは、みなさんのタイミングと、ご縁にお任せしたいと思っています。
次回は、M'ayを形にしてきたものの話です。
— M'ay